ゆで玉子むけばかがやく花曇(はなぐもり)
(中村汀女)
完璧なゆでたまご
この俳句は、俳人の中村汀女さんの俳句です。
私は動画より写真の方が好きなのですが、俳句は私にとって写真であって、印象的な瞬間がパキッと写し撮られているような句に魅力を感じます。
この俳句は、私にとっては昭和の春の台所です。
子どもたちのお弁当をつくる母親の、水仕事で少しカサついた指先。
水気の抜けた清潔な指が、ゆでたまごをテンポよく剥いていきます。
たまごの茹で方はかんぺきで、薄皮にひっつくことがなく大きな殻でつるっとむけます。
その気持ちよさ。
たまごはまだ熱いほどで、でも台所仕事に慣れた女の人は、気にもせずどんどんむいていく。
俳句はあまりにも少ない文字数で構成された世界なので、想像できる範囲が本当に広々としています。
人によってはこの俳句は、ピクニック中のひとコマであったり、仕事の合間のランチの瞬間かも知れません。花曇、という季語からも、屋外の情景であるべきでしょう。
でも、私にとっては女の人が台所で茹で上がった熱々のたまごをつるりとむいていくシーンであり、薄い桜色にけぶるまぼろしの情景です。


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