紅子はずっと黙っていた。ただそこにいるだけで、行動を起こさなかった。
静かに、静かに。
不良少年が一人、教室にぽつんとまぎれこんでいることに女生徒たちは気づき始めた。十月になると不思議がってシスターたちをしげしげと見た。
どうして大人は気づかないのか。
わたしたちの中に、男が一人、生まれたことに。どうして気づかないのか。危険なものがいることに。
これではまるで、子羊の群れ。
舌なめずりする、狼が、窓際に。
(青年のための読書クラブ/桜庭一樹)

自分の強み
これは、長い歴史を持つ女子校の話です。
この女子校に転校してきた紅子は庶民の関西人であるため、お嬢様ばかりの学校で馬鹿にされ、無視されていました。
でも、読書クラブの部員たちに徹底的にプロデュースされ、変貌した結果、今まで無視していたクラスメイトたちが気づき始め…というシーンです。
魅力って、強みのことだとおもいます。
人は、自分の強みになかなか気づけないと言われます。
多分、自分では意識せずにやれることが強みだからこそ、自分では認識できないからじゃないかと思っています。
私はこの本を確か20代の頃に読みましたが、紅子がものすごくうらやましかったです。
誰かに自分の強みを教えてほしい。
自分ではわからないけれど、魅力が無いはずがない、という妄想。
どこかの誰かがこんな風にプロデュースしてくれたら、きっと輝けるのに、紅子は程なくこの地位を捨てるけれど、私ならそんなことしないのに…といった、痛々しい若さの中に居ました。
今の自分
歳を重ねて、私はいまだに色々な悩みの中に居ますが、もう、あまりこのシーンに心惹かれない自分が居ました。
何者でもない自分に、いつの間にか折り合いはついていた感じです。
あとは、自分の今までやってきたことそのものが、そのまま自分の強みじゃないかと思えるようになってきたのもあります。
一つの仕事を長く続けてきたこと、
節約家であること、
昔は苦手だった整理整頓が、いつの間にか上手になったこと、
あとは、今の自分をある程度「よし」とできていることが、何よりの強みかなと思っています。



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